佐渡島でおすすめの絶品フレンチ「国民宿舎海府荘」のレビュー

佐渡島はS字を斜めにしたような形をしています。S字の上のカーブを大佐渡、下のカーブを小佐渡と呼んでいます。大佐渡の先端、佐渡の北限に位置する海岸沿いに絶品の仏料理を頂ける、お宿があるのをご存じでしょうか？佐渡島関地区、「国民宿舎海府荘」を紹介します。

＜目次＞

1．国民宿舎海府荘とは
2．絶品の佐渡流フレンチ
3．国民宿舎海府荘の周辺情報

1．国民宿舎海府荘とは

国民宿舎海府荘とは佐渡市関地区の宿泊施設です。背後には堂々たる自然林、眼前に紺碧の海を見据えた小高い丘に建っています。佐渡汽船両津港ターミナルからこちらを訪れるには、県道45号線からドンデン山に入る内海府ルートと国道350号線でぐるりと佐渡を半周する外海府ルートの２つがあります。（佐渡島のS字、日本海側が内海府、ロシア側が外海府）どちらのルートを辿っても、関地区が佐渡島の北端、最奥の地であることをすぐに実感できるでしょう。

内海府ルートで1時間20分、外海府ルートで2時間弱と中々の遠方ですが、近年この佐渡島の北端を目指して、海を渡る人が少なくありません。そこに絶品の佐渡流フレンチがいただける、国民宿舎海府荘があるからです。「え？国民宿舎でフランス料理？佐渡流フレンチって何？」と初めての人はみなさん首をかしげますが、一度海府荘を訪ねたら、ほとんどの人がリピーターとなってしまうのです。その理由はもちろん、胃袋掴まれちゃった、というわけで。

海府荘は釣り宿として、古くから太公望に人気のお宿でしたが、2代目のオーナーが就任した時点で、洋食メニューを取り入れた国民宿舎にアップグレードしました。何といってもこの2代目オーナー、銀座L'OSIERの花形シェフを勤めていたという経歴の持ち主。父親の後を継いで海府荘を盛り立てるため、佐渡へUターンしてきたそうです。

銀座の超高級レストランの味は佐渡人には衝撃でした。海府荘のオーナーシェフは佐渡島で身近にある食材を自分流にアレンジして、ハイセンスなフレンチに仕立て上げます。地元の人がいつも食べている、サザエや牡蠣が仏料理に大変身して、お皿に載ってくるのですから驚きです。ダイニングでコース料理をいただいていると、「え？ここはどこ？東京の一流ホテル？銀座のフランス料理店だっけ？」とおかしな錯覚をおこします。一流ホテルでもフランス料理店でもありません。ここは佐渡島の秘境、関の国民宿舎、海府荘なのです。

2．絶品の佐渡流フレンチ

海府荘では夕食メニューに和食と洋食のどちらかを選べます。季節によっては和食のみの時期もあるので、予約時に相談してください。今回は「国民宿舎海府荘」秋の佐渡流フレンチメニューを、佐渡食材と一緒に紹介します。

アミューズ（突き出し）：河豚白子のソース・トマト

一番初めのお皿はワンスプーンにたっぷりと乗ったふぐの白子でした。白子は好き嫌いの分かれる食材ですが、こちらのものは新鮮でクセがなく、とてもクリーミーです。トマトソースの酸味が効いて苦手な人でもぺろりと食べられます。白子を目にした途端、メンバーが我さきにとスプーンに手を出してしまったためにちょっと配列が乱れてしまいました。パクンと一口で頂ける最高の突き出しです。これから始まる幸せな時間を予感させる一皿。

キノコのフリカッセ〜パイ添え

サクサクのパイの中に佐渡産キノコが目一杯詰まっていました。海府荘の秋メニューではお馴染みの一品です。個人的には一番好きな秋メニュー。このサクサク感は芸術ですね。佐渡ではキノコの原木栽培がさかんに行われています。マツタケの自生する山もあり、持続可能な資源として保全されています。

フォアグラのソテー〜ソース・ペリグー〜干し柿の赤ワイン煮と共に

濃厚なフォアグラが赤ワインのトリュフソースを品良く纏っていて、これぞ、フレンチ！といった一皿です。フォアグラに干し柿？佐渡流フレンチの見せ所ですね。ペリグーとはペリゴール地方、トリュフやフォアグラの産地だそうです。柿は佐渡島国中、羽茂地区他でおけさ柿という品種が作られています。種無しの四角い渋柿ですが、渋抜きして出荷され各地で人気を呼んでいます。

ニンジンの冷製クリームスープ

食前酒に始まり、一品目から佐渡地酒、赤ワインと次々に開栓したメンバーにとって、冷製スープは本当に嬉しい！美味しい！ありがたい！メニューでした。お口さっぱり、お腹ほっこりの優しいお味です。メンバーは食前から海府荘女将さんによる、後悔しないディナーの進め方をレクチャーされていました。

海府荘はサイドメニューの自家製フランスパンがとても美味しいので、スープに浸したり、ソースに浸けたりして、たくさんパンを食べていると、メインメニューまでにお腹がいっぱいになってしまいます。「どんなに美味しくてもパンは控えめに」と言われていたにも係わらず、ソースだけになったお皿を見るとパンをちぎらずにはいられませんでした。メンバーのお皿はどれもピカピカです。美食の苦しみはあとからやってきます。くれぐれもスープやソースの付けパンはほどほどに…。

真鯛のバプール〜鷲崎産ズワイガニのソース・アメリケーヌ

魚介と野菜の蒸し料理です。鷲崎とは海府荘からぐるりと海岸線を北上した内海府の集落です。魚種豊富な漁場で冬場はブリの水揚げで有名ですが、ズワイガニも獲れるとは、ちょっと知りませんでした。ズワイガニを惜しげもなくソースにしてしまうのが、海府荘のこだわりですね。真鯛は肉厚で柔らかい、ふわっとした食感です。海府荘付近の海では沖釣りで真鯛、黒鯛、石鯛が狙えます。釣りの相談は海府荘オーナーへどうぞ。

グラニテ〜おけさ柿のソルベ〜シェリー酒掛け

グラニテ、口直しの氷菓が出て、メイン料理はまだ先です。おけさ柿は自宅で冷凍庫に入れて、シャーベットにして子供のおやつにしていましたが、このソルベを頂いてからはもう家で作るのはやめようと思いました。シェリー酒が香りよく、さらりとお口に入ります。

牛頬肉のブルギニヨン

メインは牛頬肉の登場です。ここに至るまでに天にも登るほど美味しい物をたくさん頂いてきましたが、出てきたお料理はフランス料理の皇帝と呼べる一品でした。ブルギニヨンとはブルゴーニュ地方に見られる料理、という意味です。赤ワインをたっぷり使って煮込まれた頬肉は芳醇で濃厚、定番料理でありながらこれまで食べたことがない！と感じさせる逸品でした。佐渡島に美味しいものはたくさんありますが、これは絶対に海府荘でしか食べられない、佐渡流フレンチの真骨頂です。

フォンダン・ショコラと佐渡産無花果のコンポート　ソース・アングレーズ

フォンダン・ショコラは海府荘の人気デザートの一つです。フォークを入れるととろりと溢れるチョコレートの海を、バニラの効いたアングレーズソースが受け止めます。そこへ秋メニューでは佐渡産無花果が加わりました。佐渡島小木では幻の黒無花果、ビオレ・ソリエス（=小木ビオレー）の栽培に成功しています。糖度の高い高級果実で、洋菓子と相性のいい品種です。

3．国民宿舎海府荘の周辺情報

国民宿舎海府荘の周辺は海岸線に張り出した、ジオパークの景観が見事です。ジオパークとは地球（ジオ）と公園（パーク）を合体させた造語で、大地の公園といった意味であり、地球を学び、地球を楽しめる場所を指しています。佐渡島は日本ジオパークに認定されており、海府荘周辺は多くのジオパーク体験ができる地域となっています。

大野亀

海府荘から車で20分ほど北上すると、巨大な山が海にせり出している様子が見えてきます。緑に覆われた山は近くに迫ると、山ではなく岩であることが認識できます。大野亀は海岸線に鎮座する巨大な一枚岩であり、地元では神と崇められる存在でした。毎年5月から6月にはトビシマカンゾウが大野亀の岩肌と周囲を彩ります。緑の一枚岩を埋め尽くすほどの黄色いカンゾウの花は美しいだけでなく、命の偉大さを教えてくれる気がします。

石名天然杉遊歩道

佐渡金銀山トレッキングの登山道、石名登山口が海府荘から車で約10分の場所にあります。入山は許可制で、エコツアーガイドの同行が必要です。コース内で見学できる佐渡原生林には樹齢500年を超える古木もあり、登山者の目を驚かせ、感動を与えています。

高千海岸入崎キャンプ場

リピーターの多い入崎キャンプ場は海府荘から相川寄りに車で10分ほど走ると到着します。透明度の高い高千海岸は岩礁でシュノーケリングを楽しむ人も多く、本格的な海男にも、家族連れにも人気です。炊事場とトイレ、温水シャワーが完備されています。海は好きだけどキャンプは苦手、という人は、入崎で目一杯泳いで、宿泊は海府荘、お風呂に浸かって優雅にフレンチ、というコースもありですね。

絶品の佐渡流フレンチを中心に「国民宿舎海府荘」の魅力をお伝えしました。実は海府荘の部屋内にはテレビがありません。しかしロビーにはオーナー夫妻が厳選した名著が本棚を埋め尽くしています。潮騒をBGMにお気に入りの本を読み終えたら、虫の声に包まれて眠ります。お腹いっぱい美食を楽しんだあとは、こんなゆったりとした非日常を味わうのも、佐渡流リゾートの楽しみです。